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時々雑感 賭け麻雀はいけません。

雑感

こんにちは。香港在住弁護士のマイクです。

ずっと金融都市東京について書いてますが、そこから外れたことも書きたくなったんで、こんなタイトルつけてみました。金融都市シリーズは何人かの友人から「全く同感」という感想と励ましをいただいてるんで、そちらもまだまだ書きます。

で、何かというと、最近略式起訴で罰金刑となった黒川元検事のこと。黒川さんの定年が何故か法令の解釈変更と口頭決済という無理筋で突然延長されたり、内閣府の裁量で自由に検事の定年が延長できるという法改正が通りそうになって刑事司法の崩壊と暗黒国家の突入を真剣に覚悟したのに、賭け麻雀で辞任というあっけない幕切れで何はともあれ安堵しました。この事件が発覚した際に、テンピンの賭け麻雀は合法と検察庁からお墨付きが出たとか、漫画家の蛭子さんやプロ野球の東尾さんは逮捕されたのに、とかいろんな非難や抗議が出ましたが、これはそうじゃないんだなー、と思っております。

黒川さんは私より年齢がちょっと上くらいで、学生時代は重なっています(知り合いではありませんが)。その頃、大学生の間では麻雀の全盛期で大学の周辺にはいくつも学生御用達の雀荘がありました。私も大学には麻雀のメンツを探しに行っていたようなもので、よく雀荘に入り浸って賭け麻雀してました。テンイチとかテンサンとかでしたが。他の学生も賭け麻雀してましたが、違法行為などという意識はゼロでした。その中に黒川さんいたかも。

最初に断っておきますが、賭け麻雀は違法です。これが大原則。僕が学生だった40年前(!)も今も賭博罪はありますから、麻雀やってた学生は全員犯罪者です。でもだれも逮捕されたなんて聞きません。そこには世の中の建前と本音、形式と実態があるんです。

話がそれますが、道路交通法ってありますよね。スピード違反や駐車違反で私も何度か反則金払ってます。免停も二回ほど。ところでこの反則金制度というのは、道交法特有のとっても面白い制度なんです。もはや戦後ではないと言われていた1960年に道交法はできました。当時は車が普及し出して交通事故が深刻な問題となってきたのでその対策としてスピード違反も駐車違反も全て罰金等の刑事罰でした。ところが車の普及が急激に進んで道交法違反の検挙数が急増したんですね。これ、泥棒なんかと違って、そもそも警察が交通取り締まりで捕まえるんで見逃すわけにもいかず全員刑事手続きにのせることになっていったわけです。当時の偉い人たちは慌てました。このままだと国民総前科者になってしまう!

これは困ったということで、スピード違反で検挙しても前科とならない、つまり刑事罰ではない行政罰としての反則金制度を作ったんです。これで、前科者を作ってしまう心配することなしにスピード違反をビシビシ取り締まることができるようになったわけです。法律を形式的に適用すると実態と合わなくなるところを制度的に解決したんです。

話を戻して賭博罪。これだってきちんと適用してたら当時の大学生や麻雀好きな昭和のおじさんたちは総前科者です。賭博罪に反則金制度はないので、昭和のおじさん総前科者状態を避けるためには善良な麻雀好きのおじさんたちを逮捕しないという暗黙の了解が必要となってくるんです。

この了解、専門的には「可罰的違法性」っていうんだけど、要するに形式的には犯罪だけど刑事罰を与えるほどのものじゃないから罪ではないっていうもの。学生やおじさんが仲間同士で安いレートで遊んでいるのにいちいち目くじらはたてないし、逮捕しません。

司法修習生時代も時々麻雀してました。検察修習の時、指導教官も麻雀好きでその検事の自宅に修習生仲間が集まって卓を囲みました。その時検事に賭けてもいいんですよねって聞いたら「テンピンまでなら大丈夫。」と、明確に答えてくれました。麻雀の掛け率に関する検察の不文律は存在します。黒川さんの発言とも一致してます。

じゃ単にテンピンならばなんでも大丈夫かというと、そうでもない。そもそも何故賭博罪が犯罪かといえば、賭け事をすることで怠惰で浪費的な生活をする風潮を社会に広めさらに恐喝や強盗等の犯罪も誘発させるからだと言われてます。確かに学生時代麻雀やって怠惰な生活してましたが、それは本人の問題で公共に悪影響なんて与えてないし浪費からは程遠いものなんで見逃されてたんです。レートが低くたって暴力団が絡んでいたり、賭け事を公共に影響する状態で行ったら逮捕でしょうね。

黒川さんの賭け麻雀がスクープされ、検察庁がテンピンは軽微だからという理由で逮捕も起訴もしなかったら、世間がこぞって抗議しました。やれ高級国民は贔屓されてるとか、安倍側近だから忖度されたとか、何も分かっていないマスコミも一斉に犯罪なんだから逮捕すべきという論陣を張りました。ちょっと待って。それはおかしい。黒川さんは暗黙の了解内のテンピンでやっていたのだし、仲間同士で記者のマンションというプライベートな場所でしていたのだから、なんらお咎めを受ける状況ではありません。

黒川さんはセーフです。特に他の事件との平等性を考えてればなおさらセーフです。もし非難されるとすれば、色々と他の件で問題の渦中にいる人が新聞記者と漫然と卓を囲んでいたという所であり、賭けたという所ではありません。

このスクープの後、「テンピンは合法」のお墨付きが出たと言って検察庁前の路上でわざわざ麻雀を始めた輩がいましたが、これは公共に対して賭け事をしていることを発信している時点でアウトです。また以前同じようなレートで麻雀をしていた東尾さんや蛭子さんと比べて不平等という報道もありましたが、東尾さんは一緒に卓を囲んでいたメンバーに暴力団関係者がいたようですし、蛭子さんは遊んでいた雀荘が暴力団の資金源になっていたようですね。これは逮捕されても仕方ありません。

結局、当初の方針が変更されて略式起訴で罰金刑となった(前科者になった)ようですが、検察庁としては今後賭け麻雀に関する不文律を変更するのか悩んでいるはずです。困ったものです。

ではまた次回。

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