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時々雑感 G7と国民投票法の秘めた関係

雑感

真剣に議論する時が来た。

こんにちは。香港在住弁護士のマイクです。

ロンドンでG7外相会議が行われました。一方国内では、国民投票法改正案が今国会で成立しました。この二つの出来事、偶然とは思えません。

日本は外堀を固められてます。

まず国民投票法改正案です。これは憲法改正に必要な国民投票について定める法律の改正です。改正案そのものは一般的なもので特段問題ないし、そもそもこの法律は国民投票の手続きのための法律なので、この法案が通ったこと自体は重要ではありません。ただ、今まではこの改正案が通らないために憲法改正論議に入れないという状態でした。これで憲法改正について実質的な議論ができるようになりました。これちょっと頭の隅っこに置いておきましょう。

次にG7外相会議。日米首脳会議で共同声明が発表されたときも怒って書きましたが、今回G7外相会議でも日本国内でほとんど議論がないうちに、いやむしろ当然のように「台湾」の安全を「中国」から守るという日米首脳会議と同じ内容の声明を出しました。G7外相会議声明で「台湾」に言及するのは初めてだそうです。来月に開かれるG7サミットの声明でも当然同じ文言が入ってくるはずです。ちなみにG7は
英国、フランス、ドイツ、イタリア → 欧州
米国、カナダ → 北米
日本 → 唯一、東アジア
なので、日米の時もそうですが、中国に前線で対峙する位置にあるのは日本だけです。

今回注目すべきことに、議長国英国の招待で韓国、インド、オーストラリア、南アフリカが招待されています。このうち韓国は北朝鮮を挟んで中国とお隣り、インドは中国と国境で紛争が絶えない、オーストラリアは中国と既に経済紛争しているという国です。明らかにこの3国を中国包囲網陣営に入れてきました。インドとオーストラリアはかつての英国の植民地。なかなかやるな。

英国空母クイーン・エリザベスをインド洋と太平洋に派遣し、日本にも寄港する予定です。1968年にスエズ運河より東に駐留していた軍隊を撤退させて以降今日まで軍隊を派遣してきませんでした。EC、EUに加盟してずっと欧州の一員として大人しくしていたんですね。ところがブレクジットで欧州と別れて自由になり、もう一度海洋国家として世界に目が向くようになりました。時は米国と中国が太平洋を挟んで睨み合っています。油断してると中国はインド洋周辺諸国も手下にしようとしてます。
「これはうかうかしておれない。早く日米と組んで対中陣営を作らなきゃ。欧州のお隣さんたちや昔の子分も仲間に入れてしまおう。門番みたいな韓国も引き込んでしまおう。自分たちも出陣だ!」
こんなところですかね。

フランスだって黙ってません。南太平洋にはニューカレドニアを始め綺麗な島々を持っています。インド洋南西部にも持ってます。なので、欧州では唯一、太平洋地区に軍艦を派遣してました。この島々と周辺の海が中国の配下になったらたまりません。そこで、2019年からインド洋で日本の自衛隊、米国とオーストラリアの軍隊を交えて共同演習をしています。今年はそれにインド軍も加わりました。で、ついに来週九州で日米仏共同訓練やります。地上戦訓練もします。陸自出番です。

そうなればドイツも。今年の夏、インド太平洋にフリゲート艦派遣しちゃいます。共同演習だってします。かつての同盟国日本と一緒に中国に睨みを効かせます。

さて、ここまで見ると、西欧諸国に北米、オーストラリア、インドを加えた陣営は明らかに現実の対戦相手として中国を想定し着々と準備をしています。その上で東アジアで最も重要な場所に位置する日本とガッチリ手を結び、各地で共同の実戦訓練を始めてます。今後はもっと増えるでしょう。中国から見れば常に一緒に声明を出して共同訓練をしている日本は明確に西側連合軍です。

でも、今の日本に何ができるんですか?この中で日本だけ軍隊を持っていません。「丸腰」の日本が前線で敵国に対峙し、遠くヨーロッパ大陸やアメリカ大陸から援軍が来るのを待つという構図です。もちろん、最近は自衛隊の行動範囲と行為可能範囲が憲法解釈の変更(こんなのが許されるのかはとりあえず置くとして)で拡張されて、事実上軍隊と言ってもおかしくないのかもしれません。しかしそこにはやはり憲法上超えられない一線があります。軍隊がないのだから、防衛費を上げて米軍などに協力を仰げばいいか?悠長な話をしている場合ではありません。丸腰で戦えないから連合軍守ってねなどと言っていたら、真っ先に標的です。

日本には平和憲法があります。憲法9条がその中核です。しかし、今真剣にこの条文を検討する時期がきました。冒頭に話した国民投票法改正がこの時期成立したのも、偶然ではないと思います。野党が憲法改正の実質議論が必要ということに気がついたのかもしれません。いずれにしても今までは改正議論の入り口で揉めていて議論自体ができませんでした。その意味で今回このタイミングでの改正案成立は重要なのです。

今の西側諸国の動きとそこに連動している日本を見ると、いつの間にか日本も軍隊を持たざるを得ない状況になっています。完全に外堀固められてます。これが数年前だったら、憲法改正反対票のが多いと思われましたが、この状況だとわかりません。憲法改正という熱湯風呂のフチに立って「絶対、押すなよ!」と言っている日本を西側諸国が寄ってたかって背中を押そうとしているみたいです。今回、菅総理がそこまで考えて、つまり憲法改正を真剣に議論せざるを得ない状況を国民に気がつかれないうちに作り出すことを目論んで日米の共同声明を出したのであれば、見事な策士です。誰か賢い参謀がいるに違いない。

もちろん、戦争や武力紛争には絶対反対です。しかし、戦争をしないという理念と、万一の場合を想定して準備をしておくというのは別です。これは万一の場合を想定して何を準備すべきかの議論です。この議論を待ったなしで始める時期がきました。原発事故はあり得ない、だから万一の事故に備えた対策も考えない、という愚行はもう終わりです。

ちなみに私は、憲法改正論議をすることには賛成です。憲法そのものに改正手続きの規定があるのだし、変化する時代に即して改正することは必要です。

日本が軍隊を持つことも基本的には賛成です。自立した独立国が独自の軍隊を持つことはむしろ当然です。日本もジャイアンの陰に隠れて吠えている限りいつまで経ってもジャイアンの子分です。

ただし、政府が正しく軍隊を制御できる制度であれば。

戦前の日本がなぜ戦争に突っ走ってしまったかといえば、天皇の統帥権という日本独特の統治構造が国の民主的統治機関とは別の権限として存在し、これを陸海軍が利用して暴走、国体護持のために個人に犠牲を強いたところにありました。なので、現憲法の骨組みの個人の尊厳、平和主義のなかで自衛隊を軍隊と認め、民主的制御をしつつ国防のための任務につかせることであれば軍隊を持つのもありだと思っています。自衛隊を行政府の中に位置づけ、正面から認めるということです。この辺りをじっくり議論すべきかと思っています。

平和にボケてる時代は終わりました。ではまた次回。