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東京をアジアの金融ハブへ(7)

金融都市東京

日本はどうよ

こんにちは。香港在住弁護士のマイクです。

さて、心底羨ましかった香港で改めて日本はどうだったかを思い出してみると180度反対側でしたね。以前、残念な事件を二つ書きましたが、私が日本で本当に残念な経験をしたのは外資系証券会社法務部にいたときです。私がいたのは1990年代の終わる直前から2010年頃までなので、その時から改善されている事を期待しますが、当時の金融庁の臨店検査はひどいものでした。まず予告もなく突然「お客様」はいらっしゃいます。しかも20人くらい。ライブドアに乗り込んだ特捜部かというような状況です。で、部隊は小隊に分かれてターゲットとする部署に乗り込みます。法務部は全社中の情報の宝庫なんで真っ先にターゲットとなります。令状もなくいきなり執務室に「失礼します」と入ってきて目が「動くな」と言ってます。「どんな業務をされているのですか?」と言いながら勝手にキャビネットを開けてこれはと思う資料を「これお借りいていいですか?」と言って押収します。「ダメです」なんて言えません。業務に支障が出るとかの考慮は無しです。令状も無しです。その後、社内の会議室の一つを検査用に占拠し3ヶ月ほど居座ります。その間、目をつけられたフロントも含めて法務部にも毎日のように「取調べ」の呼び出しがかかります。そこでは「これはなんじゃ!悪巧みを隠しておるのだろう!白状せい!」「滅相もございません、お代官様。私どもは法を守って誠実に仕事をしております。」「嘘を申すな!わしの目はごまかせんぞ!ここにおっしゃる通りでございます、私が悪うございましたと書いて署名して持ってこい!」って会話が繰り返されます。逆らえば打首です。もう笑うしかないような内容のものにも「おっしゃる通りです。当社が悪うございました。」と書いて100個くらいの反省文みたいな報告書を書きます。例えば(あまり具体的には書けませんが)、、ある難しい案件で検討の結果社長が最終決断したものに対しては「社長が独断で判断してガバナンスが機能していない」、大きな案件で両社の代表が同席して署名し契約書を交換した案件では「署名が真正なものか署名艦(この言葉それまで使ったことが無くて何ですかそれって思わず聞き返してしまいました)で確認しなかった」。

当局の考えはよく言えば監督下にある企業に法を遵守させることにあるのでしょうが、要はお代官様が企業をお白州の上に座らせて有無を言わさずその権力を見せつけ逆らえない様にする構造になっていました。当局内部でも企業からどれだけ反省文を書かせたかが評価の対象になっていたとの話も。そこには法治国家の下で企業を成長させて国家を発展させるというような政策的で広い視野は完全に失われてます。1990年代半ばまでMOF担という役職が出世コースとして存在したのもうなづけます。そんな訳で日本で金融関連の事業ライセンスを取るということは当局対応の膨大なコストを払わなければならないという覚悟が必要でした。これを避けるためにその後勤めたPEファンドでは事業ライセンスのいらないストラクチャーでビジネスをしていたのですが、それがあまりに窮屈になってきたので香港に移ったというのも税務の外の大きな理由です。

日本にいるとこんな検査が当然だと思ってしまうのですが、この内容をNY、ロンドン、香港の法務部の同僚に話すと全く理解してくれませんでした。例えばロンドンでも当局の検査はあるのですが、検査の数日前に提出して欲しい書類のリストが知らされて検査当日にそれを渡せばあとは何回かの問い合わせに答えるだけで数日で終わるそうです。何のストレスも業務への支障もありません。香港に至っては検査ってあったっけのレベルでした。

この話は書き出すとまた頭に血が昇ってくるので健康上の理由でこのくらいにして続きは次回に。