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コモンの継承(3)

コモンの継承

ここはポルトフィーノか!?

今日は。香港在住弁護士のマイクです。

前回の漁師の生活の話、いかがでしたか。魅力を感じていただけたでしたでしょうか。引退後の年金生活ではなく、現役世代の人たちから子供や壮年期の人たち(ここが僕かな?)が普通に経済的にも文化的にも豊かに生活している場面を想像してみました。

なぜそんなことを考えるようになったか、少し遡ってお話しします。

今から4年ほど前の夏、日本にいる友人から突然チャットが飛んできました。

「四国に行って古民家買わない?」
「いやいや、四国って行ったことないし、いきなり古民家って言ったってイメージわかないし。でもまあ面白そうだから行ってみようか。」

こんないい加減なのりで、四国に行くことにしました。二泊三日の予定です。今はコロナで欠航中ですが、香港空港から高松空港まで直行便が飛んでます。4時間弱。東京からちょっと北海道に遊びに行ってきますくらいの感覚です。
高松空港で現地のKさん(今ではすっかり友人です)と落ち合って、車でさらに海沿いの街に向かいます。香川県を車で走って車窓から風景を眺めているとなんとも不思議な気持ちになってきました。

始めて見る景色なのに、絶対昔見たことがある。。。

デジャヴってやつですね。田んぼの中に瓦屋根の一軒家が見えてきてその向こうにおむすび山が見える。。。そうだ、「日本昔ばなし」で「坊や〜、良い子でねんねしな〜。」の曲が流れている時のバックの絵にそっくり。これこそ日本の原風景。なんだかとても嬉しくなってきました。
ちなみに後で地元の人にそのことを話たら、
「それ逆です。日本昔ばなしの絵を描いている画家が高松出身で、あれは香川の風景が元。だから漫画が香川の風景にそっくりなの。」

目的地は高松空港から車で1時間弱の海沿いの街でした。家を見て回るというより、いろいろ体験してその街を知るところから始めました。海岸沿いを車で走って景色を堪能し、カヌーで無人島まで渡って夕日を眺め、地元産の野菜や魚介、肉でBBQをしました。海は限りなく透明でまるでモルディブみたいで(行ったことないけど、)、夕日は空全体を赤く染めてまるでエーゲ海にいるようでした(行ったことないけど、、)。瀬戸内海に静かに佇む島々、マリーナに浮かぶヨット、地元の新鮮な野菜や魚介、すっかりポルトフィーノでくつろいでいる気分です(行ったことないけど、、、)。古民家も予想に反して古屋敷とでもいうような立派な日本家屋、周りを塀で囲まれた今風に言うとゲーテッドハウスがいくつも建っていて、周りを畑が囲んでいます。道も車一台が通るくらいの幅で、絶対に100年以上前から変わっていない。ここを別荘にして日本昔ばなしの世界でのんびりした休暇を楽しむのもいいな。それ以外の時は民泊で貸し出そうかな。

三日目にはすっかりその街に魅せられて、その年の暮れには築120年の大きなお屋敷と土地を驚くほど安い金額(ちなみに不動産売買契約上この古屋敷の評価はゼロ)で購入してました。

ここの風景は100年以上前の街並みがそのままの貴重なものだ。これを残しながらもっと住みやすい環境にするのはどうだろう。空き家になって壊されてしまう前に買い手を見つけて同様に改修し、古民家の街並みを残す別荘地とするのが良さそう。そのためには不動産ファンドを組成して、機動的に資金が供給できる仕組みを考えてみよう。運営は「アルベルコ・ディフィーゾ」っていう方法が良さそうだ。将来ここがポルトフィーノと並ぶリゾート地として有名になれば投資家も十分リターンを取れるはず。そうやって街が100年後も綺麗な街として存続しているのであれば素晴らしい!

そんなことを考えながら、改修工事を始めました。古民家の改修は新築工事より複雑で時間とお金がかかります。気長に進めつつ構想もゆっくり膨らませていました。

そうこうしているうちに現地を訪れる機会も増えてきて、お隣の方ともすっかり仲良くなりました。段々様子が分かってくるといくつも面白いことに気がつきました。

近所に住む人たちは門にも玄関にも基本鍵をかけない。
近所を歩いている人は皆知り合いである。
よその家の前にある側溝でも汚れているのに気がつけば掃除をする。
その日に食べる野菜や果物を自分の畑から直接採ってくる。
ついでにお隣にも分ける。
収穫したお米は他人が収穫したお米と共同で保管し、皆で分け合う。
よく外で立ち話をする。
畑仕事をしている方に挨拶するとそこから30分は話が始まる。
他愛のない話を楽しんでいる。
登校する小学生の中に子供がいないと近所の人が心配して電話をくれる。

すっかり忘れていましたが、僕も元々は田舎で生まれ育っていますから、小さい頃は似たような生活をしてました。でもそれはそれ、これはこれとして改修工事を進めてました。

2000年になり、工事もだいぶ終盤にかかってきた頃、コロナ禍で世の中が一変します。僕も日本と香港を行き来することが困難になり、一方で家でじっくり本を読んだり考えたりする時間が増えました。で、今やろうとしている不動産ファンド、ちょっと違うぞと考え始めたのです。

この続きは次回に。

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